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アジャイルとは何か、アジャイル開発とは何かを理解する

執筆者の写真: 正田 洋平|Yohei Shoda正田 洋平|Yohei Shoda

アジャイル型の内部監査を理解するにあたっては、「アジャイルとは何か」を理解することが重要です。アジャイルはソフトウェア開発から発展したプロジェクト管理の手法です。この記事ではソフトウェア開発におけるアジャイル開発がどのようなものなのかを振り返ります。


アジャイルの定義と起源


アジャイルという言葉は、「機敏な」「俊敏な」「素早い」という意味を持ちます。ビジネスの世界では、変化に迅速かつ柔軟に対応する開発手法や思考方法を指します。


アジャイルの起源は1990年代後半のソフトウェア開発にさかのぼります。当時、従来の重厚長大な開発プロセスの非効率性が問題視され、より柔軟で適応性の高いアプローチが求められるようになりました。


2001年にアジャイルマニフェストが発表されて以降、この考え方は急速に広まり、現在では様々な分野で適用されています。


アジャイルの核心は、顧客との密接な協力、迅速なフィードバックループ、そして継続的な改善にあります。これにより、プロジェクトの進行中でも変更を柔軟に取り入れ、最終的な成果物の品質と顧客満足度を高めることができるのです。


アジャイル開発の主な手法


まず、最も広く使われている「スクラム」です。スクラムでは、短い期間(スプリント)で繰り返し開発を行います。3つの役割(プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チーム)、5つのイベント、3つの成果物を中心に進められます。スクラムの特徴は、チームの自己組織化と顧客ニーズへの迅速な対応にあります。


次に「エクストリーム・プログラミング(XP)」があります。XPは、高品質のソフトウェアを迅速に開発することを目的としています。ペアプログラミング、テスト駆動開発、継続的インテグレーションなどの実践を重視し、プログラマーの生産性と成果物の品質向上を図ります。


最後に「カンバン」です。カンバンは、作業の可視化と進行中の作業量の制限に重点を置いています。カンバンボードを使用してワークフローを管理し、ボトルネックの特定や作業の最適化を行います。カンバンの柔軟性は、様々な業界で広く採用されている理由の一つです。


アジャイルマニフェスト:価値観と原則



アジャイルマニフェストは、2001年に17人のソフトウェア開発の専門家によって作成されました。このマニフェストは、アジャイル開発の基本的な価値観と原則を定義し、ソフトウェア開発のアプローチに革命をもたらしました。


アジャイルマニフェストは4つの価値を掲げています:

  1. 個人と対話:プロセスやツールよりも、個人間のコミュニケーションを重視します。これにより、チームの創造性と生産性が向上します。

  2. 動くソフトウェア:包括的なドキュメントよりも、実際に動作するソフトウェアを重視します。これにより、顧客に早期から価値を提供できます。

  3. 顧客との協調:契約交渉よりも、顧客との継続的な協力関係を重視します。これにより、顧客ニーズにより適切に対応できます。

  4. 変化への対応:計画に固執するよりも、変化に柔軟に対応することを重視します。これにより、市場の変化や新たな要求に迅速に適応できます。



これらの価値観に加えて、アジャイルマニフェストは12の原則を定めています。これらの原則は、アジャイル開発の実践的なガイドラインとなっており、顧客満足の最優先、変更要求の歓迎、短期間でのリリース、持続可能な開発ペースの維持などを強調しています。



ウォーターフォール型開発とアジャイル型開発の比較



ウォーターフォール型開発とアジャイル型開発には、いくつかの重要な違いがあります。

まず、アプローチの違いです。ウォーターフォール型が順序的、直線的であるのに対し、アジャイル型は反復的、適応的です。


計画に関しては、ウォーターフォール型が大規模で詳細な初期計画を立てるのに対し、アジャイル型は小規模で柔軟な計画を立てます。

変更への対応においても大きな違いがあります。ウォーターフォール型では変更が困難でコストが高くなる傾向がありますが、アジャイル型では変更を柔軟に、むしろ歓迎する姿勢を取ります。


顧客との関係性も異なります。ウォーターフォール型ではプロジェクトの開始時と終了時に主に関与するのに対し、アジャイル型では継続的な関与を重視します。

成果物の提供タイミングも、ウォーターフォール型がプロジェクト終了時に一括で行うのに対し、アジャイル型は短い間隔で継続的に行います。


品質管理においても、ウォーターフォール型がプロジェクト終盤でのテストを重視するのに対し、アジャイル型は継続的なテストと改善を行います。


重要なのは、プロジェクトの特性に応じて適切な手法を選択することです。アジャイル型の主な利点は、変化への迅速な対応、早期からの価値提供、顧客フィードバックの継続的な反映にありますが、プロジェクトの規模や性質によっては、ウォーターフォール型が適している場合もあります。


アジャイルの考え方の他分野への適用



アジャイルの考え方は、元々ソフトウェア開発のために考案されましたが、その柔軟性と効率性が認められ、現在では様々な分野で適用されています。


  1. マーケティング:アジャイルマーケティングでは、短期間のキャンペーンを実施し、結果を迅速に分析して次のアクションにフィードバックします。これにより、市場の変化に素早く対応し、効果的なマーケティング戦略を展開できます。

  2. 人事管理:アジャイルHRでは、従業員のニーズに迅速に対応し、継続的なフィードバックと改善を重視します。これにより、従業員の満足度向上と組織の生産性向上を図ります。

  3. 経営戦略:アジャイル経営では、長期的な計画に固執せず、市場環境の変化に応じて戦略を柔軟に調整します。これにより、不確実性の高いビジネス環境での競争力を維持します。

  4. 内部監査:アジャイル監査では、リスクへの迅速な対応、継続的なフィードバック、柔軟な計画変更を行います。これにより、組織のリスク管理とガバナンスの効果を高めます。


アジャイルの考え方を他分野に適用する際は、各分野の特性に合わせてカスタマイズすることが重要です。また、組織文化の変革や従業員の意識改革が必要になる場合もあります。しかし、適切に導入することで、組織全体の俊敏性と効率性を大幅に向上させることができます。


投稿者


正田 洋平|Yohei Shoda

Front-IA(株式会社フロンティア)代表取締役

公認内部監査人(CIA)、公認情報システム監査人(CISA)、公認不正検査士(CFE)、認定スクラムマスター(CSM)


大手監査法人及びコンサルティング会社等で、15年以上にわたり、ガバナンス・リスク管理・コンプライアンスに関するアドバイザリーに従事。プロジェクトマネージャーとしてメガバンクを始めとした国内外の主要金融機関、政府系金融機関、公的機関、事業会社など幅広いクライアントにアドバイザリー業務を提供した経験を有する。​​


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